田城讓弁護士による法律コラム 交通事故や相続問題、離婚問題やその他、法律に関するコラムをご紹介。

レストランで食器を割ってしまった時の弁償?

その他

【Q】彼女とのデートで、ちょっと気張って高級レストランへ。ところが食事中、うっかりワイングラスを落として割ってしまいました。 3万円もする高級グラスだとかで、全額弁償するよう言われたのですがなんだか納得がいきません。どうしたら……?

【A】全額を弁償する義務はないと考えてよいでしょう。
故意、過失によって相手に損害を与えてしまった場合、法律では、損害賠償責任を負うことが定められています(民法709条)。

ただしその場合も、賠償する額はあなたが予想できた範囲内でよいことになっています。
そこでご相談のケースですが、通常、レストランのグラスというのは消耗品、として扱われていることが普通であり、特に高価なグラスが使われていることはまれですから、あなたが割ってしまったグラスが、特に高価であった場合、たとえそれを割ったとしても、利用客であるあなたが高価なグラスの代金の全額を払うというのは、予想の範囲外と言えます。

それに、特に高価な食器やグラスを使用しているレストランには、それを事前に利用客に伝え、扱いに注意するよう説明する義務があると考えられます。それをせずに利用客が過ってグラスを割った場合には、店側にも説明義務を怠ったという落ち度があるわけですから、客側は賠償を請求されてもグラス代を支払う義務はないと言えます。

では、高額なグラスのデリケートな取り扱いに注意するよう説明を受けたにもかかわらず、過って壊してしまったとしたら。その場合には、民法722条の「過失相殺」の考え方が適用されます。具体的なそれぞれの負担金額については、自動車事故の示談と同じように、店側と利用客が話し合って決めることになるでしょう。

ただし、破損の原因が明らかに利用客の不注意である場合、たとえば、お酒を飲みすぎて乱暴な扱い方をして割ってしまったときなどは、全額弁償する義務が生じます。

いずれにしろ、あなたに明らかな非がないかぎり、全額を弁償する必要はないというのが、ご相談に対するお答えです。

これとは別に、食器などのワレモノを扱う店で、展示商品を見ているうちに過って壊してしまったというケースもよくあります。この場合は展示の方法が問題になります。入口付近や通路に面した棚など、事故が起きてもおかしくないような場所に高額な商品を展示していたのであれば、客側に弁償する責任はないと言えます。逆に、「お手を触れないでください」などの表示がしてあったり、ワレモノにふさわしい扱いをしていたにもかかわらず、客側の不注意で割ってしまったという場合は、客側に賠償責任が出てきます。

ちなみに、破損した商品の代金を弁償するにあたっては、損害賠償保険などの特約がついているクレジットカードもありますから、カード会社に問い合わせてみることをお勧めします。

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