中小企業にとっての顧問弁護士
先日ある中小企業経営者の集まりで、中小企業の強みというテーマでディスカッションをしました。
いろんな業種が集まって意見を出し合ったのですが、概ね顧客との距離が近く関係が密接なので、顧客に対して顔が見えるサービスが提供できる、迅速な対応が可能、各顧客に対するパーソナルサービスが可能であることなどが、大企業には不可能な中小企業の強みであるとの回答が出されました。
そして、提供するサービスや商品を考えた場合、安価で、大量消費に適するものは、結局商品の個性は重要ではないし、仕事の内容も熟練は不要で、画一的サービスをマニュアルで処理されることに適しているわけで、そのような商品やサービスの市場では大資本が圧倒的に有利であり、中小企業では太刀打ちできないという結論に至りました。
こういった議論を前にして、弁護士の仕事を見た場合にも同じことがいえると改めて感じました。弁護士が仕事をする場合、その提供する仕事と、顧客との関係は、次のような構図になるのではないかと思うのですが、如何でしょうか。
顧客との距離が近く、社長の要望に即応でき、担当者とも連絡が密で、技能も高度な弁護士事務所は、顧客の注文に応じて料理を提供できる料理店や、オーダースーツを仕立てるテーラーと同様であり、顧客にとっては電話一本で予約ができて、お互いに気心が知れたパーソナルな対応を受けることができます。
大型の事務所は、デパートと同様に、高級品から大衆品まで何でも揃うし、かつ顧客に対する一般的なサービスは均一で洗練されている可能性が高いでしょう。ただ、上得意を対象とする外商と、一般の店頭販売では顧客へのサービス対応は全く異なるでしょうし、上得意でない限り担当者を指名することもできませんから、一般の顧客の満足度は担当との偶然の出会いに左右されます。
また誰がやっても同じ結果になる定型的な、過払い請求などの法務サービスを提供する場合は、スーパーマーケットが扱う商品と同じで、安いことが最大関心事で、担当者の個性などは問題ではないわけで、こうなるとサービスの提供者は必ずしも弁護士である必要は無いですし、広告を頼りにより安いところを探すという顧客に合わせて価格だけが重視されるということになっていきます。
このような弁護士業務へのあてはめを披露したところ、中小企業経営者からは概ね肯定的な意見をいただきました。