貸した車が交通事故
【Q】車を持っていない友人に車を貸したところ、人身事故を起こし、相手は1カ月ほど入院治療が必要なけがをしてしまいました。私はどの程度の責任を負えばよいですか? 自賠責保険から賠償金を払えばよいのでしょうか?友人は金銭的に、どこまで責任を負う必要がありますか? (26歳会社員)
【A】自動車事故による損害賠償責任について、自賠法(自動車損害賠償保障法)という法律があり、その3条に、運行供用者責任が定められています。車の所有者は、直接自分が運転していなくても、原則として運行供用者として損害賠償の責任を負います。責任を負う賠償の内容としては、被害者に対して、治療費や入院費、休業損害(ケガで休業している間の収入補償)、慰謝料等を支払わなければなりません。
また無断使用された車が事故を起こした場合でも、管理状態によっては責任を負う場合があります。あるいは車が盗難にあった場合でも、所有者が運転者と雇用関係にあるなど特別な関係がある場合には、運行供用者として責任を負う場合があります。
実際には、自動車の所有者は自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)に入ることが義務付けられていますから、誰が事故を起こした場合でも、この自賠責保険を使うことができます。
ただ自賠責保険は、被害者が死亡や寝たきりになってしまったような場合は保険金として3千万円、けがの場合には、120万円が保険金の限度となっています。しかし、運行供用者責任を負うのは、自賠責保険の範囲だけではありませんので注意して下さい。自賠責保険の支払い限度額以上の賠償責任がある場合がほとんどですから、任意保険にも加入しておく必要があるのです。
任意保険によっては、26歳未満不担保や、運転者を限定した特約など、いろいろな付帯条件を付けることで保険料が安く設定されているものがあります。そのような特約付きの任意保険は、本問のように他人に車を貸した場合のように、条件に反する人が事故を起こした時には、保険は使えません。任意保険に入るときには、保険料だけではなく、どういった場合に保険が使えないのかを充分検討するようにして下さい。
車の修理費については、貸し主から借りた人に対して損害賠償請求ができます。
被害者の立場から言えば、加害者のほうが積極的に示談の話をしてこないような場合は、自賠責保険に対して被害者請求をすることもできます。そして、車の運転者及び運行供用者である車の所有者に対しても損害賠償請求の訴訟を提起することができます。
車を貸すときには、貸し主にも責任が生じることを充分考えたうえで、むやみに車を人に貸すことは差し控えたほうがいいでしょう。